種苗法改正の問題点を簡単に分かりやすく解説。今、日本の食に危機が迫っている。

こんにちは!オリカです。

今、「種苗法改正」が検討されています。

ほとんど全くと言ってよいほど、国民の耳に入って来る事がないまま、改定の方向で進んでいますが、これによって、私たち国民や一部農家の人々にとってはかなり大きな影響のある内容変更だと私は思っています。

今回は、少し危機意識を込め、種苗法改定の問題点や、私達国民そして農家さんにどんな影響があるのか、この記事で共有させてください。

(2020年5月13日に「遺伝子組み換え・ゲノム編集の表示義務」に関する部分の内容に誤りがありましたので訂正しております。申し訳ございません。)
一部、極端な表現がありましたので、2020年5月15日に一部再編集しました。

種苗法とは?

種苗法とは、簡単に言うと「新たに農産物の品種が開発された時、それは開発した人(事業者)の知的な財産になるので、その品種を登録したら、権利として保護され、他の人や企業が無断でその種苗を販売したり増殖したりする事は出来ませんよ。また、この権利が保護されるのは25年間(果樹で30年)ですよ。」という内容の法律です。

いわば、新たに農産物などを作った人の権利を保護する、「著作権の農産物バージョン」です。

そして「その種苗を他の人が使いたかったら、開発者(育成者)から種苗を『購入して』栽培し、その収穫物を販売する事はできますよ」と続いています。

そしてここからが大切な部分です。現在の種苗法では、「他の人は、種苗を開発者(育成者)から『購入』し『栽培』して得た収穫物から採れた「種」を、また次の年や次期も、また自分の田畑で蒔いて栽培し続けてもよいですよ自家増殖OK!】」とされています。

種苗法改正の内容は?

では、この法律の内容がどのように変更されようとしているのでしょうか

とても大まかに言ってしまえば、「自分のところで採れた農作物の種を採取して、また蒔いて栽培する事が出来る【自家増殖OK!】から、一部の品種や、これから新しく登録される品種を【自家増殖NG!】」という方向に転換させようと検討しているのです。

実は、種苗法の内容変更はこれが初めてではありません。’98年には一度大きな種苗法の改定があり、多くの農産物の品種(野菜、果物、花まで)が実は既に【自家増殖NG】リストに入っています。

今回の内容変更で、今後「【自家増殖NG】品種リストに段階的に多くの品種が加えられ、将来的にはとうとう品種によっては【原則自家増殖NG】!」となる状況が生まれる可能性があるのです。

ちなみに、この「改定後の種苗法」は別名海外では、あの農薬と遺伝子組み換え、ゲノム編集技術で有名なモンサント社の社名をとって「モンサント法」とも呼ばれています。

種苗法改正の問題点は?

ここからが私達が一番関心のある今回の種苗法”改正”の問題点ですが、それを解説するには関連法や日本の食の全体像を少し遠回りしながら説明しなければなりません。(言い換えれば、遠回りして説明しないとこの種苗法改定だけ見ては問題点に気が付きにくいほどです。)

まず、2018年4月に廃止された「種子法」について触れていきます。

2018年4月に廃止された種子法

お米や小麦、大豆など、日本の主要な農産物は、2018年4月1日までは「種子法」という法律によって、「国民を二度と飢えさせない」という考えのもと、戦後に制定されました。

これによって、お米や小麦、大豆などはこれまでずっと「国民の主食を確保できるように、主要農産物の栽培には国からお金を出しましょう。種苗も公的機関から農家に継続的に提供できるように」と守られてきました。

ところが、政権は「種子法」が民間企業の種子の開発を妨げている、時代や需要にそぐわない、などとして、2018年4月にいつの間にか種子法を廃止させてしまったのです。

また、種子法廃止が検討されていた時期とほぼ同時に制定された新法があります。それが「農業競争力強化支援法」。

民間企業の参入を妨げていたとする「種子法」を廃止し、「農業競争力強化推進法」にて、読んで字の如く、農業に参入する民間企業の競争を推進する方向に舵を切ったのです。

種子法の問題点についてはここでは詳しく触れませんが、もしよろしければ、当時、種子法が廃止された時にご説明した以下の記事を参考にしてください。

「農業競争力強化推進法」について

種苗法からは少し遠回りしてきましたが、もう少しお付き合いください。

この法律ができた事により、農家の人や公的機関が今まで何十年も、もっと言うと何百年もかけて培ってきた、知恵と努力の「農産物の生産ノウハウ」いわば「公共の財産とも言えるものを、民間の企業が手に入れる事ができ、それをもとに企業は農産物の研究、開発を進めていく事ができるようになるのです。

遺伝子組み換え・ゲノム編集された農作物や加工食品を買いたくなくても、選べなくなる日がもうじき来る

驚かれる方も多いかと思いますが、もうじき、食品ラベルへの「遺伝子組み換え表示」の表示義務を一部、無くしていく方向に突き進んでいます。

今まででしたら、5%以上の遺伝子組み換えが入っている食品には表示義務がありましたが、今後、豆腐や納豆といった大豆食品の表示を事実上、義務付けない方針で検討しているようです。

ちなみに、遺伝子組み換え技術の兄弟分のような「ゲノム編集技術」については、すでに’19年夏より表示義務なく流通が可能となっています。ゲノム編集のゲの字すらご存じない方も多いのではないかというのに、です。

ゲノム編集については説明が長くなってしまうので、もしご興味のある方は以下の記事をご覧ください。

「食の安全」といったテーマになると、必ずと言ってよいほど議論に挙がってくる「遺伝子組換え」ですが、「表示義務がなくなる」ということは、遺伝子組み換えやゲノム編集された農作物や加工食品を買いたくなくても、「選べなくなる」という事にほぼ等しいと思われます。

参照文献
山田正彦. 売り渡される食の安全,株式会社KADOKAWA, 2019, p.5.

危ない列車のレールがほぼ完全に敷かれた

ここまで、関連法や近年の一連の流れをご説明してきましたが、一度ここで順を追って整理してみたいと思います。

①2018年4月、政権下の「種子法廃止」と新法「農業競争力強化支援法」にて、民間企業の参入を促し、「公共の財産」である何十年、何百年と培ってきた日本の主要農産物の生産に関する知見を事実上民間企業に渡すことができるようになった。

一部の遺伝子組み換えやゲノム編集の表示義務が無くなる。一方で、企業は新たな品種の研究・開発を進めていく。

③今回の「種苗法改正」によって、企業などが新しく開発した品種を登録出願し、今まで当たり前に栽培して自家増殖していた品種が、新しい品種の権利を侵害していると万が一判断されてしまった場合、栽培するのに許諾を得なければならなくなったり、許諾料を支払わなければならなくなったり、極端な事を言うと、企業は農家に賠償請求をしたり、農家は種苗法違反として罰則(種苗法の違反は、10年以下の懲役と、一千万円以下の罰金)が課せられてしまう可能性がある。それを回避するため、一部の農産物や特定の品種を栽培している農家さんは、企業と契約し、毎年、種や苗を購入しなければならない状況が生まれ始める可能性がある。

実際に海外では、農家さんが多国籍企業に賠償請求をされたり、契約書に縛られて毎年種苗を買い続けなければならなくなり、契約上セットにして売られた農薬や化学肥料によって自分の畑の土壌がやせ細ってしまったという農家さんは少なくないようです。

この一連の流れは、いわば日本の食を危ない状況に導いてしまう「乗ってはいけない列車」のレールだと私は考えます。今は、列車の発車までカウントダウンが始まっている段階だと感じます。

不明確な判断基準

ちなみに、農林水産省のHPの「種苗法の一部を改正する法律案について」内「法案参考資料」を読むと、以下のように書いています。

出願品種の権利侵害が疑われた品種が侵害品種か否かを、農林水産省が判定する制度を創設する

これが逆なら分かるのですが、新しく登録される品種と、そうでない品種(品種登録されたことのない品種や登録期限を過ぎた品種、日本固有の伝統的な品種)だというのは、農林水産省は何を基準に判定するのでしょうか。品種のどこまでの差異を「権利侵害」だとするのでしょう。

例えば、民間企業が遺伝子操作を駆使して開発した、とても美味しくて害虫に強くどんな気候でも育てられ、今までの3倍の量が収穫できる「スーパーライス」を登録出願した時、それが今まである日本古来のお米の品種と似通っていた場合、それが権利侵害になるかどうか、何を判断基準にするのでしょうか。

種子法の廃止によって、企業が今までの日本在来品種の栽培に関する知識を事実上手に入れる事ができるようになったのですから、この事態が起こる可能性は十分にあると思います。

参考:農林水産省.“種苗法の一部を改正する法律案について”. https://www.maff.go.jp/j/shokusan/shubyoho.html, (2020.5.14)

求められる事

ここまで「企業、企業」という表現をしてきたのは、多くは国内大手の化学企業や、多国籍企業の事を差しているつもりですが、ローカルの小規模または個人で種子苗の育種事業を営んでいる方で、地域の特色ある品種を保護していくためであったり、事業継続のためにも、この改定を望んでいる方もいることと思います。

ところが、新しく品種を農林水産省に出願登録するのには、数百万~数千万円の費用がかかるとのこと。こんな莫大な費用、ほぼ大きな企業を対象としているとしか思えなくなってきてしまいます。

日本の各地域の特色ある、多様で、ユニークで、微妙な違いが楽しめる農作物の品種をまもっていこうと思えば、それを望んでいる地域の小規模・個人の育種事業を営んでいる方々が事業を継続できるようにするためにも、別の角度・視点から、今ある日本伝統の在来種、地域によって多種多様な品種を保護するための制度、法案とセットに考えるべきだと思います。

これは、国にも当然求めることですが、ローカルレベルでも各地域で、育種事業者さんの事業維持、そして地域の特色ある固有の多種多様な品種の確保ができる方法を探っていくことが大切ではないでしょうか。

参照文献
山田正彦. 売り渡される食の安全,株式会社KADOKAWA, 2019, p.95.

私達にとっては問題点の多い種苗法改正

こうして、企業が効率よく生産でき、収穫量も多く、味も良く、どんな気候にも適しており、虫にも強く、雑草の影響を受けにくく、すぐに収穫できる「スーパー農作物」がこれからどんどんスーパーに並ぶのを想像してみてください。

私達の先祖が知恵を絞ってできた、日本各地、その土地土地に合っていて、風土で味の違いが楽しめる、「土地ごとの特色が楽しめる日本の伝統的な農産物」はどこへ行ってしまうのでしょうか。私達はもう品種や土地による、農作物の微妙な味の違いを食卓や旅行先で楽しめなくなるのでしょうか。

農作物の値段はどう変わっていくのでしょうか。

農家さんの将来は?

「スーパー農作物」は多くの場合、日本古来の在来種の育種苗の知見を得た資本力のある大きな企業が、遺伝子組み換え、ゲノム編集、農薬、化学肥料などをたくさん駆使して研究・開発された農作物です。土壌もどんどん弱っていき、環境にも悪影響です。

そんなものは食べたくないですか?でも、私達は選べません。一部の「遺伝子組み換え」や「ゲノム編集」が食品に表示されなくなる日が近いかもしれないのです。

今までこのブログの中で、種子法廃止やゲノム編集などについて、話題になった時期に(本当は話題にすらなってないですね)、その問題点を私なりに少しまとめてきましたが、今回のこの種苗法の改定によって、全てが「繋がった」と思っています。

こんな事、国民の多くが知らずに数年前からどんどん進んでいるなんて、本当にちょっと驚きです。

私達には「選ぶ」権利があるのですから、まずは国がまずきちんと説明しなければ、私達が知ることなしには、賛成も反対もありません。声の挙げようもありません。その事に首をかしげてしまいます。

この一連の流れがあまりにも知られていないと感じたので、今回、私の知る範囲でご説明させていただきました。

このブログのテーマは「オーガニック」ですが、オーガニックの基本は「農業」です。全ての有機製品は有機農作物からできています。農業を知らずしてオーガニックは成り立ちません。

種子法廃止、遺伝子組み換え、ゲノム編集、そして種苗法”改正”。どれもオーガニックの考え方とは相反するものだと思い、共有させていただきました。

参考文献
山田正彦. 売り渡される食の安全,株式会社KADOKAWA, 2019, 237p.


最後まで読んでいただきありがとうございました!

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